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2024年3月期の事業の状況及び2025年3月期の業績予想

2024年3月期におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の行動制限の緩和により社会・経済活動の正常化が一段と進み、全体として堅調に推移しました。一方で、ウクライナや中東情勢をはじめとする地政学的リスクの高まりやインフレの進行、中国や欧米を中心とした景気後退懸念などにより、世界経済は先行き不透明な状況が続きました。

このような中、高砂香料グループの売上高は前期比4.9%増の1,959億円で過去最高となりました。

事業セグメント別では、フレーバー事業は、日本・アジアの飲料向けが堅調に推移したことで売上高は3.4%増となりました。フレグランス事業は、シンガポール子会社およびインドネシア子会社において香粧品向け等が好調だったこともあり、売上高は11.2%増を達成しました。また、アロマイングリディエンツ事業は、メントール関連が停滞したものの、付加価値の高いスペシャリティ製品が好調に推移し、売上高は9.1%増となりました。一方、ファインケミカル事業は、医薬品中間体の売上が前期を下回る結果となりました。

地域セグメント別では、日本は、フレーバー部門において猛暑の影響もあり飲料用香料の販売が堅調であったことに加え、フレグランス部門でもランドリーケア関連香料の販売が好調に推移し、売上増となりました。米州においては、フレグランス部門は堅調で増収を達成しましたが、為替影響を除くと全体では減収となりました。欧州においては、フレーバー部門がアフリカ地域でのビジネス拡大により増収を達成したものの、為替影響を除くと全体では減収となりました。アジアにおいては、フレーバー部門で注力カテゴリーである飲料およびセイボリー用香料の販売が好調、フレグランス部門でもエアケア、パーソナルケア、ファブリックケアカテゴリーにおいて堅調で、両部門ともアジア新興国市場での売上も好調に推移しました。

利益面では、原材料価格等の高騰に対する取り組みとして価格改定等も進めてまいりましたが、人件費をはじめとする販管費の増加により営業利益は前期比61.1%減となりました。

2025年3月期は、地政学的リスクや世界的な金融の引締め、為替変動など不安要素について引き続き注視していく必要があります。香料業界においても、競合他社との競争環境は厳しい状況が続いておりますが、引き続き東南アジアでの成長が期待でき、成熟市場である欧米でも底堅い成長を見込んでおります。 
 

最終年度を迎えた中期経営計画New Global Plan-1 【NGP-1】の振り返りについて

2024年3月期は中期経営計画 New Global Plan-1 【NGP-1】の最終年度となりました。NGP-1では、「海外の成長促進」「国内の利益改善」「サステナビリティの推進」という3つの基本方針に基づき、5つの柱、7つの重点課題を設定し、事業を推進してきました。

基本方針の1つ目「海外の成長促進」に関しては、売上高、営業利益ともに安定的に成長してきた海外での事業を更に拡大すべく、各拠点において組織の充実、活性化を図ってまいりました。インドネシアにおけるフレーバー、フレグランス⽣産体制の構築はそのひとつです。引き続き新興国を中⼼とした市場の伸⻑を取り込んでいくため、さらなる事業基盤強化が必要と考えています。

基本方針の2つ目「国内の利益改善」については、近年は利益面で厳しい状況が続く日本国内の事業について、安定した収益を生み出す基盤としての役割を担うべく、利益改善を進めてまいりました。NGP-1では、健康志向など時代ニーズに合った⾹料提案をはじめとする新領域のビジネス獲得や、合成事業における製品拡充と設備投資を進めた結果、市場成長が停滞する中での売上高増加を達成しました。⼀⽅、収益性は目標とした水準に届かなかったことから、製品構成やコスト競争⼒などさらに踏み込んだ対応が必要です。国内市場は拡大が見込めませんが、売上高全体の約4割は、今なお国内の売上が占めているため、引き続き利益改善を進めてまいります。

基本方針の3つ目「サステナビリティの推進」では、「人にやさしく、環境にやさしく」をスローガンに掲げた当社グループの長期ビジョン「Vison 2040」の実現に向けて、2021年に策定した中長期サステナビリティ計画「Sustainability2030」を推進してきました。気候変動では、温室効果ガスの排出削減目標についてSBT認証取得や人権についてはデューデリジェンス活動を開始するなど、軸となる活動の立ち上げができました。この中長期計画に従い、今後もサステナビリティ施策を推進してまいります。

NGP-1では、売上⾼については各年とも計画を上回り、最終年度の2024年3月度は過去最⾼の売上⾼となりました。基本的な戦略は新中期経営計画に引き継ぎ、残課題は引き続き全社一丸となって対応してまいります。
 

新中期経営計画New Global Plan-2【NGP-2】について

新たな中期経営計画の策定にあたって、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」や当社の資本効率について、総合的に検討していく中で、「Vision 2040」の定量⽬標の⼀部を⾒直しました。そして、新中期経営計画の定量⽬標は、最終年度に当たる2026年度の売上⾼を2,200億円、営業利益率を5%、ROEを8%としました。

新中期経営計画NGP-2では、「海外の成⻑」「国内の収益性改善」「サステナブルな経営」の3つを基本方針とし、各基本⽅針におけるKey Success Factors(重要成功要因)を設定しています。Key Success Factorsによってどこに力点を置くかを明確化し、ステークホルダーへ示しています。

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「海外の成⻑」については、海外での売上⾼が年々増加していくなかで、事業軸よる成⻑戦略や競争⼒のある技術を通じて着実にビジネスを拡⼤、成⻑させてまいります。また「国内の収益性改善」については、⽇本はグループ全体に占める売上高が最も⼤きい地域ですが、収益性においては苦戦が続いています。製品ポートフォリオの適正化、新領域の開拓、費⽤構造改⾰などを通じ、収益性の改善を図ってまいります。そして「サステナブルな経営」につきましては、Sustainability2030の実⾏を通じて社会課題の解決に貢献するとともに、経営基盤の強化を図り、持続的な経営を推進してまいります。

高砂香料グループでは、2040年のありたい姿を「Vision 2040」に定め、「人にやさしく、環境にやさしく」をスローガンに掲げています。NGP-2は、そのあるべき姿へ向けて変革を推し進める重要なステップと認識しており、設定した方針、戦略を着実に実行し、取り組みを加速してまいります。
 

基本方針「サステナブルな経営」について

3つ目の基本方針である「サステナブルな経営」においては『「Sustainability 2030」の実行』をKey Success Factorsの1つに挙げていますが、ここでは高砂香料グループが行っているサステナビリティ活動の主なものを述べます。

現在取り組んでいるテーマの1つに気候変動に伴う課題があります。世界的な気候変動問題については2020年4月、TCFD提言に賛同し、その提言に則って高砂香料グループの方針を定めました。2021年5月には国際的なイニシアチブである「Science Based Targets」から、温室効果ガスの削減目標の認定を受け、2030年に達成すべき数値目標を明確にしました。「Sustainability 2030」の進捗管理におけるKPIを温室効果ガス排出量に設定し、定期的にモニタリングしています。Scope1、2についてはグループ生産拠点との再生可能エネルギーに関するディスカッションを活発に行い、電気使用量の多い合成工場(磐田工場)では再生エネルギー由来の電気使用量を増やすことで、Scope2を大きく削減してまいります。

また、高砂香料グループは製品のライフサイクルアセスメントについても長年取り組んでいます。現在は、アロマイングリディエンツ製品について、外部コンサルタントと協働してさらなるカーボンフットプリント値の精度向上を図っています。今後は、第三者に認証を受けたカーボンフットプリント値の開示およびさらなる削減を進めていく予定です。Scope3については、2022年に環境省支援事業「サプライチェーンの脱炭素化支援事業」に参画し、そこで得られた知見をもとに、2023年からは、原料カテゴリーごとにタスクフォースを結成し、サプライヤーエンゲージメント活動をグローバルに展開することで、サプライチェーン全体の脱炭素化を図っています。

生物多様性の保全も非常に重要なテーマの1つです。高砂香料グループは、シトラス、ミント、バニラ、コーヒーや合成メントールの出発原料であるミルセンなど多くの天然原料を使用しています。当社の調達部門では、Takasago Global Procurement Sustainability Key Initiatives (TaSuKI)を推進しています。その代表的な活動として、2019年から米国フロリダ州で地元の精油加工メーカーとシトラス農園と協同で始めたグレープフルーツの植樹プロジェクトがあります。フロリダは世界有数のシトラスの産地であり、高砂香料グループも長年地元で加工されたグレープフルーツやオレンジなどの精油を購入していましたが、年々生産量が減少していくことが危惧されていました。2023年には、植樹したグレープフルーツから収穫が始まり、今年以降、この2023-24クロップから精油が得られる見通しです。

環境負荷低減のため、高砂香料グループでは水の使用量削減や、廃棄物量の削減にも取り組んでいます。量の削減だけでなく、法規制に合致した排水と排出に努めています。コンプライアンスは経営上の最重要課題の1つであり、高砂香料グループは、適用基準や適用要件を明確にして、グローバルで取得している、ISO14001環境マネジメントシステムで管理しています。

製品開発においてもSDGsへの貢献を意識して取り組んでいます。近年、気候変動や森林の減少といった環境問題が深刻化する中、当社の環境負荷が低い香料素材と技術はSDGsの課題解決へ貢献するとともに、多くのビジネスチャンスがあると考えています。省エネルギーや省資源を実現する、当社独自の連続フロー技術や触媒技術、バイオ技術を活用した環境負荷の低い天然由来香料素材の開発、生分解性を有する再生可能なアロマイングリディエンツの開発等、さらに深化を図ってまいります。また、限られた天然資源の有効利用に向けて、再生可能資源の探索・利用、代替素材開発による天然香料素材の使用量削減、未利用資源の活用等にも積極的に取り組んでまいります。現在、高砂香料グループはNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプログラムに参画し、省エネルギーに寄与する技術開発テーマに取り組んでいます。今後も、SDGsに貢献すべく、より独自性ならびに優位性の高い技術や製品を開発し、人々のQOLやウェルビーングの向上に貢献してまいります。

高砂香料グループのサステナビリティ活動はESGの各分野から構成されていますが、ここでは環境に焦点を当てて進捗を述べました。各分野ともに多くの課題がありますが、これからも一つひとつ丁寧に解決に向けた対応をしてまいります。

NGP-2初年度の抱負について

今期(2025年3月期)は、対前年4.6%増の売上高2,050億円を目指します。営業利益につきましては、対前年72%増の40億円を見込んでおります。今期の設備投資においては、磐田工場の医薬品中間体製造設備やドイツ子会社の新棟 ”QA1” 開設などがあります。また、グローバル基幹システムの導入プロジェクトも進めてまいります。

ステークホルダーの皆様には、当社グループのさらなる発展にご期待いただき、これからも長期的なご支援を賜りますようお願い申し上げます。