「データ解析から、香りづくりをサポートする。」
大竹 優也
MASAYA OTAKE
先端領域創成研究所
2013年入社 総合理工学研究科 化学環境学専攻 修了
- 高砂香料を志望した理由は?
偉大な研究者の後ろ姿を追いかけて
大学では有機合成の研究を行っていたので、化学メーカーを中心に就職活動をしていました。当社を見つけたのは、ナビサイトがきっかけです。香料メーカーの中でも、化学分野の研究開発に力を入れていることを知り、興味をもちました。特に2001年にノーベル化学賞を受賞された野依良治先生の不斉合成技術が活かされている、l-メントールの工業化が印象に残っており、私もそうした高度な研究開発に携わりたいと思い、入社を決めました。
- 現在の仕事内容を教えてください。
データをもとに、香りをデザインする。
データの分析や解析などを行い、香りの研究開発や各種課題解決に向けて情報を提供しています。データと一言で言っても、機器などの計測で得られるものからヒトの評価で得られるものまで多種多様です。これらの多岐にわたるデータを正確に把握し最大限に活かすために、他部門の研究員と議論したり、関連する情報を組み合わせたりしながら、目的に応じた知見や新たな価値を生み出すシステムを構築し、製品開発などのサポートや効率化を図っています。
- 仕事のやりがいと苦労する部分を教えてください。
データからアイデアが生まれる喜びがある。
データ解析によって新しい知見が得られ、それが研究開発の新たなアイデアにつながったときは嬉しいです。これまで開発に携わった香料素材が特許出願されましたが、そのときにはこれまでの苦労が報われた思いでした。とはいえ、目的の香りにならないことの方が多く、根気強く研究を重ねていかなければならないことは、苦労するポイントです。また、私の場合は配属されてから必要なスキルを身につけたため、配属当初は思うように仕事を進められずに苦労したことを覚えています。
- これからの目標を教えてください。
高砂香料はもちろん、地球の課題にも取り組みたい。
仕事を進めながら、環境に優しい香りづくりに貢献することが目標です。ここ数年、気温の上昇や洪水をはじめとする自然災害など、地球温暖化が原因と考えられる気候の変動を肌で感じることが増えました。こうした事象に対して、植物由来原料を利用した香りをデザインすることや、香りの生産の効率化などによって環境への負荷の軽減をめざすなど、当社としてできることに取り組んでいきたいです。
- 印象に残っているエピソード
人生に、必要のない経験などない。
現在の部署に配属されてから3年ほど経ったころ、情報技術を活用して、新しい香料素材の開発支援を担当することとなりました。そのプロジェクトは私が担当する以前より進められていましたが、なかなか思うように進捗していない状況でした。新しい香料素材を開発するために、データの解析や香料素材のデザインを行いますが、デザインされたものを実現することが難しいことがありました。このテーマを進めるにあたり、学会や論文などからの情報収集や、学生時代の経験を振り返りながら、私らしいアプローチができないかと模索していました。あるとき、私が学生時代に行っていた研究の経験と、情報処理技術のひとつが結びつき、新しい香り素材をデザインする手法を開発するに至りました。この手法を適用したところ、目的としていた香りタイプの新しい香料素材を見出すことができ、その手法の有用性を実際に確かめることができました。さらに、新たな手法を開発したことで社内で研究表彰を受けただけでなく、見出した香料素材が特許出願されるなど、私のキャリアの中でも大きな成功体験となりました。
キンモクセイの香り
毎年10月の夏が終わって涼しくなったころに、優しく華やかに甘く香るキンモクセイは、秋晴れの空や運動会、ピクニックや山登りなどの思い出と結びつき、とても晴々とした気分にしてくれるからです。私にとっては、自然が生み出す香りの神秘さと、秋の澄んだ空気が調和していると感じられる香りです。
※こちらの記事は取材当時のものです。