高砂香料。創業以来、心に秘めた自然(ナチュラル)志向
パリ、2021年5月24日
高砂香料
創業以来、心に秘めた自然(ナチュラル)志向
ナチュラルビューティ
グリーン革命という言葉を耳にするようになりました。消費者の環境や安全への意識や要求水準が高まるにつれ、市場の商品にも厳しい目が向けられるようになっています。化粧品業界は安全性や環境への配慮を明確に示すことによって、こうした変化に対応しています。特に、「ナチュラル」を訴求することで、純粋さ、健康、環境への配慮といった現代人が求めるものに応えていると言えるでしょう。「ナチュラル」という概念は、香料業界にとっても、私たちの思い描く未来の「美」にとっても、きわめて重要なものになっています。
不自然なまでに「ナチュラル」
ナチュラルでクリーンな美しさへの要求がますます高まり、既存のブランドは広告や商品の背景となるストーリーを見直し、「ナチュラル」の要素を取り入れることが多くなっています。一方、新規ブランドは新しいナチュラル・コンセプトの製品を上市して市場をリードしています。
こうした中、消費者のアプローチは①高品質 ②処方の簡素化、といったある種のミニマリズムに向かっているようにも見えます。メーカー側も、透明性を追求するため、これまで曖昧にされてきた成分組成や処方を公開し、それぞれの成分の有用性や由来、そしてその効果を伝えることが多くなってきました。ナチュラルを訴求するために製品中の天然成分の割合が増加し、ときには配合率が100%になることもあります。これとあわせ、これらのメーカーは原材料の調達力とトレーサビリティーを強化しています。素材の希少性や純度、生産地の認証が、消費者に対して高い付加価値をもたらしているからです。
自然と科学、未来の方程式
自然と科学、このふたつの分野は両極にあるのではなく、密接に結びついています。科学的な研究により、天然エキスのパワーと効能が実証されています。逆に、革新的な新しいブランドの中には、天然素材に由来するアレルギーに対応するために、繊細な肌に合わせて一般にはあまり知られていない純粋な合成素材の使用を選択したところもあります。
ファインフレグランスの分野では近代香水の全盛期に、人間のイマジネーションを駆使して創られた合成香料が大きな役割を果たしてきましたが、現在でも多くのブランドはそれらの価値を認めています。また、合成香料の使用は天然資源の消費量軽減にもつながることを消費者に知ってもらう必要があるでしょう。科学は、その限界を超えることで自然に貢献することができます。香料業界においても、ヘッドスペース、再生可能な天然資源を利用したグリーンケミストリー、バイオテクノロジーなどのグリーンテクノロジーは、自然を守るための強力な手段となっています。
高砂香料工業は、自然への敬意をインスピレーションの源としています。
高砂香料は1920年の創業以来、自然を大切なものと考えてきました。
今日では、これまで以上に責任ある調達戦略を通じて、環境への負担を軽減しています。
フットプリント(廃棄物、水使用量、二酸化炭素排出量の削減)と、社会的責任への取り組みの責任を果たしています。
私たちのビジョンの一環として、具体的なコミットメントと10年後の数値化された目標を示しています。
SBT(Science Based Targets)を通じて当社の目標を明確に公開するとともに、二酸化炭素の排出量削減の成果などは「社会・環境報告書」によりグローバルに報告しており、その内容はウェブサイトでもご覧いただけます。
無駄を省き、廃棄物を適切に処理することは、グリーンビューティーを追求する上で重要な役割を果たします。
過去に使用されていたものを、グリーンケミストリーを用いてアップサイクルして得られた原材料もその一役を担います。
また、グリーンビューティーはグローバルでなければならないため、以下のような社会的・倫理的な姿勢を取り入れることも必要です。
① 生産者をはじめとするすべての関係者に、良好な労働条件と公正な支払いを保証すること
② 生態系の保全を図りながら、サプライチェーンを構築すること
高砂香料工業、テルペン化学とグリーンケミストリーの100年
1954:天然素材を原料とした初のバイオベース原料
(レモングラスオイルから抽出したd-シトロネラールからのl-メントール)
1983:世界初の天然素材由来のバイオベース原料
(松から抽出したミルセンからのl-メントール)
2001年:野依良治当社社外取締役がキラル化学でノーベル化学賞を受賞
2014:香料会社として初めて、成分のバイオベースドインデックスを公表
2016:香料会社として初めて、当社ソーシング評価ツール 「TAKASOURCE」 のエコサート認証を取得
2019:ふたつの生産拠点でRSPO-MB認証を取得
2020:欧州子会社の努力が認められ、エコサート プラチナ認証を取得
これにより、当社はCSRの分野で最も業績の良い企業の上位1%に
2020:成分「l-Menthol」、「Biocyclamol®」、「Biomuguet®」でUSDA(米国農務省)の「BioPreferred」認証を香料会社として初めて取得
サステナビリティ2030を通じて継続的に取り組んでいます。
2020-2030
- 温室ガス排出量(総量)-27.5%
(2030年 vs 2019年、SBTiに沿った目標) - 2030年の水使用量を2020年比で10%削減
- 2030年の廃棄物発生量を2020年比で5%削減
- 2030年までに、すべての生産拠点で再生可能エネルギーによる電力を30%以上使用する
高砂香料では、責任ある調達のためにふたつのユニークなプログラムを設けています。
内部:「TaSuKI (Takasago Global Procurement Sustainability Key Initiatives)」(たすき)
TaSuKI は戦略的な原材料調達のためのプログラムです。次の4つの主要な目的を達成することをめざしています。
① 品質・価格・供給の安定化および新たな価値の創造
② 原産地の地域社会の尊重およびその地の環境保全への支援
③ トレーサビリティの追求とコンプライアンスの徹底
④ 透明性のある情報開示
外部:「TAKASOURCE」
TAKASOURCEは 、当社の天然原料調達のための評価ツールです。2016年にこの調達評価手法により、香料業界で初めてエコサート認証を取得しました。このツールは、
① 環境(Environmental)
② 社会(Social)
③ 経済(Economic)
の3つ観点に基づく評価マトリックスです。
このマトリックスにより、500以上の供給元と約60のサプライヤーを調査し、製品のトレーサビリティーを向上させ、天然素材のサステナビリティのレベルを知ることができます。このマトリックスのおかげで、私たちは、13,000エーカーの土地と900万本の木から収穫され、先住民の人々がその作物でより良い生活をすることを可能にするオーストラリアのサンダルウッドオイルのような特別な素材を紹介できるようになりました。
高砂香料と責任ある創造
私たちの優先事項は天然原材料の責任ある調達を改善することですが、環境への負荷を最小限に抑えるための新たな解決策も模索しています。そのためには、たとえばメントールの製造に使用されている松から抽出された原材料の、サステナブルに管理された代替資源を見つけなければなりません。そのため、私たちは2020年3月に、松材製品に特化した企業 Lawter B.V.の一部株式を取得しました。天然資源を枯渇させることなくより持続可能な代替品を見つけるため、科学的なアプローチが重要な役割を果たしています。
高砂香料は、今日、香料会社に必要とされるグリーンビューティーのすべての基準を満たしています。
サステナブルな素材を使ったパレット
- 当社の原料パレットは、エッセンシャルオイルから、オーガニック認証を受けた生物多様性の保全を促進する天然素材までを含んでいます。
また、責任ある生産と製造、公正で公平な支払いの確保、生物多様性の保全を証明する「For Life, Fair for Life」と表示される素材も含まれます。
- 天然成分は、成分(木材、紙、果汁産業などの副産物)を再利用して新たな命を吹き込むアップサイクルによって製造されます。
- 合成成分のパレットには、持続可能な天然資源から作られたバイオベースのものや、松の誘導体などの天然カーボン(炭素)を50%以上含むものがあります。
- バイオテック原料とは、微生物の生合成によって作られた原料のことをいいます。サトウキビなどの豊富な天然原料から、微生物によって香料が作られています。
- キラルサイエンスで得られた高品質の合成香料には、以下のようなメリットがあります。
① 製造プロセスで、実質的に廃棄物を出さない
② 非キラルの同等品よりも資源消費量が少ない
③ 香気も非キラルの同等品よりすぐれている
- 化石資源から作られた原料に比べてカーボンフットプリントを削減したバイオスイッチ原料は、自然や環境への負荷を最小限に抑えることができます。
サステナブルフォーミュレーション
-ヘッドスペース分析により、天然の植物の香気を再現するフレグランスを調香することで、絶滅危惧種の香りの保存が可能になります。
- RSPO-MB認証を受けた原料を使用した製品を製造することで、持続可能なパーム油誘導体の使用を保証し、環境にやさしく、森林破壊を抑制します。
- 処方中の成分情報を提供することで透明性を確保することができます。