2002年モレキュラー・キラリティ・アワードを受賞

高砂香料工業は1920年に日本初の合成香料製造会社として設立され、1983年には、世界に先駆けて、BINAP-Rh(I)触媒を用いる不斉合成によりl-メントールの工業化に成功しました。
これにより、当社のファインケミカルメーカーとしての方向性が「触媒的不斉合成」に決定づけられ、以後、不斉合成技術をキーテクノロジーとした独創的技術 を武器に様々な分野で応用研究を重ね、1992年には同ルテニウム触媒でカルバペネム系抗生物質の鍵中間体、アセトキシアゼチジノン(4AA)の供給を開 始しました。これに続き、ニューキノロン系合成抗菌薬中間体プロパンジオール(PPD)、エイズ薬などのキラルパーツなどの供給実績を積んでいます。その 間も、当社はBINAP触媒の成功に慢心することなく、研究を不斉触媒技術の革新に集中し、1999年には次世代の不斉合成触媒の不斉配位子として、 SEGPHOSの開発に成功しました。
SEGPHOSは、コンピュータケミストリーを駆使した分子設計によって、BINAP触媒を超えるべく考案された不斉配位子である。SEGPHOS開発の 発想、つまり、BINAPを超えるための解決法はBINAPを構成するビナフチル骨格における二面角を狭くするという考えにあり、BINAPのビナフチル 基を(4,4'-ビ-1,3-ベンゾジオキソール)-5,5'-ジイル基に代えたもので、実際、ルテニウム金属と組み合わせることによりBINAPを凌ぐ 不斉認識能と触媒活性を実現しています。
当社はSEGPHOS触媒をBINAP触媒から置き換え、さらに多様な医薬中間体製造の道を拓き、新たな事業の核とする方針です。とりわけ、抗高脂血症 薬、抗菌、抗生物質、抗鬱薬、糖尿病、頻尿治療、骨粗しょう症、エイズ薬の合成中間体を手がける考えです。BINAPはその能力の高さと分子の美しさを蝶に例えられます。SEGPHOSは蝶よりも高く、そして速く、分子から分子へと滑空する「かもめ」に因んでいます。
<本件に関する問い合わせ先>
高砂香料工業株式会社 総務部広報室 03-5744-0514